この記事では、湿球温度とは何か、どのように決まるのか、わかりやすく解説します。
湿球温度とは
湿らせたガーゼで覆った感温部で測定される温度
中学校の復習をしていきましょう。
湿球温度はこのような乾湿温度計で測定されます。
2本の温度計の一方の感温部をガーゼで包み、一端を水のタンクに入れたものを乾湿温度計と言います。
画像の左が乾球、右が湿球です。
湿球温度はガーゼに含まれる水分が蒸発するため、乾球温度よりも低い値になります。
そして、下表から湿度を求めることができます。
湿球温度はどのように決まるのか
湿球温度は「湿球に供給される熱量ー蒸発によって消費される潜熱」で決まります。
式で表すとこのようになります。
$$\frac{mC_m}{A}\frac{dT_M}{dt}=h_c(T−T_M)$$
$$−k_p(p_{sM}−p)(Δh_v)_M$$
A:表面積[m2]
Cm:比熱容量[J/(kg・k)]
hc:熱伝達係数[W/(m2・K)]
kp:物質移動係数[水蒸気・kg−水蒸気/(s・m2・Δp)]
m:質量[kg]
(Δhv)M:温度
TMにおける蒸発潜熱[J/kg-水]
TM:湿球の表面温度[K]
psM:飽和蒸気圧[Pa]
右辺第一項が空気から湿球へ供給される熱量、右辺第二項が蒸発によって消費される潜熱を表しています。
つまり、左辺は湿球の温度上昇に使われる熱量を表していることになります。
湿球温度は以下のような流れで決まります。
①最初は湿球温度が上昇していく
- 最初は空気と湿球温度の温度差(T−TM)が大きいので供給熱量(熱伝達)が大きい
- 一方、湿球温度TMは小さく湿球の飽和蒸気圧psMも小さくなるので、湿球の飽和蒸気圧と空気の蒸気圧の差(psM−p)は小さく、蒸発によって消費される潜熱も小さい
- 結果、湿球温度TMは上昇する
②いずれ供給熱量と消費熱量が等しくなり湿球温度が一定となる
- 湿球温度TMが大きくなると湿球温度の温度差(T−TM)が小さくなり供給熱量(熱伝達)が小さくなる
- 一方、湿球温度TMが大きくなり湿球の飽和蒸気圧psMも大きくなるので、湿球の飽和蒸気圧と空気の蒸気圧の差(psM−p)が大きくなり、蒸発によって消費される潜熱が大きくなる
- 結果、供給熱量(右辺第一項)と消費熱量(右辺第二項)が等しくなり、湿球温度は一定となる
湿球温度は、供給熱量と消費熱量がバランスしたときの温度ということができます。
熱伝達について知りたい方はこちらをご覧ください。
まとめ
湿球温度について解説しました。
乾燥技術には似たような用語が多く出てきますので、一つ一つ意味を理解していきましょう。
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