真空ポンプってどんな種類があるの?
どうやって選んだらいいの?
そんな悩みを解決します。
・真空ポンプの種類と特徴
・真空ポンプの選び方
この記事を読めば、真空ポンプの特徴を理解し、プロセスに適した真空ポンプを選ぶことができます。
真空排気の設計方法については「真空ポンプの排気速度と配管径の求め方」で解説しています。
私の仕事は化学プラントの設計です。
その経験をもとに分かりやすく解説します。
☑ 化学メーカー生産技術職
☑ 工学修士(専攻:化学工学)
真空ポンプの種類
真空ポンプには様々な種類があります。
真空ポンプの選定に失敗すると、
- 排気速度や到達圧力の不足による品質異常
- 頻繁に故障するため、保守メンテコスト大
など様々な不具合が出てきます。
そのため真空ポンプの特徴を理解して、正しく選定することが大切です。
ここでは真空ポンプの種類と特徴を解説していきます。
以下に主要な真空ポンプの種類と特徴を一覧表にまとめました。
ポンプ名称 | 作動圧力範囲 | 排気速度が最大となる圧力 | 排気速度m3/min | ガスの制限 | メリット | デメリット |
往復式ポンプ | 102 ~ 105 | 105 | ~120 | ダストNG | ·構造が簡単で取り扱いが容易 | ·真空度が悪い ·据付面積が大きい |
水封式ポンプ | 103 ~ 105 | 105 | ~270 | なし | ·構造が簡単で取り扱いが容易 ·化学装置に適している | ·真空度が悪い ·騒音大 ·封液の補給が必要 |
油回転ポンプ | 1~105 | 105 | ~36 | 水分、低沸分、ダストNG | ·真空到達度が高い | ·オイルの取り扱いが煩雑 ·排気量が小さい |
ルーツポンプ | 10−2~105 | 1~100 | ~600 | ダストNG | ·排気量が大きい ·真空到達度が高い ·設置面積が小さい | ·吸引ガスによっては頻繁なメンテが必要 |
蒸気エジェクター | 10~105 | ~600 | なし | ·可動部なく保守が容易 ·排気量が大きい | ·運転コスト(蒸気費用)が大きい |
往復式真空ポンプ
往復式真空ポンプはピストンが往復動作することによって真空を得るポンプです。
構造的には往復圧縮機と同じです。
往復式真空ポンプは低速なため風量当たりの重量が大きく、設置面積が大きくなりますが、構造が堅牢で取り扱いが容易であること、中間真空での効率が良いなどのメリットがあり、広く使用されている。
水封式真空ポンプ
水封式真空ポンプは羽車を回転させると、ケース内の封液は遠心力によってケース内側に沿って液環をつくります。
羽車の2枚の羽根と液環で仕切られた空間が回転位置によって増減することで気体を吸引·排気します。
ダストや水分、油分、薬品などのガスを吸引できるため、化学装置に適しています。
油回転ポンプ
油回転ポンプは油によって機密と潤滑をしながら、ローターの回転によって気体を吸引、圧縮、排気します。
真空到達度が高いというメリットがありますが、水分によって油が汚れると性能が低下する欠点もあります。
ルーツ真空ポンプ
ルーツ真空ポンプは2個のルーツローターが相互に接触することなく、微小な隙間を保って運転しています。
高速回転できるため、排気量が大きい、到達真空度が高い、設置面積が小さい、省エネなどたくさんのメリットがあります。
注意点はローターの隙間が微小なため、吸引物にダストが含まれる場合は頻繁なメンテナンスが必要となることがあります。
蒸気エジェクター真空ポンプ
蒸気エジェクター真空ポンプは水蒸気をノズルから高速噴出させることで、ボディー内部に定圧空間を生成して外部流体を吸引します。
運動部分がなく、潤滑油を使用しないのでダストを含む高温ガスを取り扱うのに適しています。
注意点は、運転コスト(蒸気費)が大きくなることです。
真空ポンプの選び方
真空ポンプを選定する手順は以下の5つです。
- 必要な運転圧力と到達圧力を把握する
- 必要な排気速度を求める
- ガスの成分を把握する
- 真空ポンプ種類一覧表から選定する
- メーカーに相談する
①必要な運転圧力と到達圧力を把握する
どれくらいの圧力で運転したいのか、圧力をどこまで下げる必要があるのか考えましょう。
運転圧力と到達圧力はプロセスによって決まりますので、確認してください。
②必要な排気速度を求める
プロセスに必要な排気速度を求めましょう。
真空排気速度は以下の手順で求めることができます。
- 真空排気量·Q[m3·Pa/s]を推定する
- 実効排気速度qeff[m3/s]を求める
- コンダクタンスK[m3/s]と配管径を求める
- 排気速度qp[m3/s]を求める
詳細は以下の記事で解説しています。
【真空排気の設計】真空ポンプの排気速度と配管径の求め方【計算付き】③ガスの成分を把握する
排気するガスがクリーンなのか、ダストや水分、薬品などを含むのか確認しましょう。
ガスの成分は真空ポンプを選定する上で、非常に重要です。
④主要真空ポンプ一覧表から選定する
以下の表から、①運転圧力と到達圧力、②排気速度、③ガスの成分に適した真空ポンプを選定しましょう。
ポンプ名称 | 作動圧力範囲 | 排気速度が最大となる圧力 | 排気速度m3/min | ガスの制限 | メリット | デメリット |
往復式ポンプ | 102 ~ 105 | 105 | ~120 | ダストNG | ·構造が簡単で取り扱いが容易 | ·真空度が悪い ·据付面積が大きい |
水封式ポンプ | 103 ~ 105 | 105 | ~270 | なし | ·構造が簡単で取り扱いが容易 ·化学装置に適している | ·真空度が悪い ·騒音大 ·封液の補給が必要 |
油回転ポンプ | 1~105 | 105 | ~36 | 水分、低沸分、ダストNG | ·真空到達度が高い | ·オイルの取り扱いが煩雑 ·排気量が小さい |
ルーツポンプ | 10−2~105 | 1~100 | ~600 | ダストNG | ·排気量が大きい ·真空到達度が高い ·設置面積が小さい | ·吸引ガスによっては頻繁なメンテが必要 |
蒸気エジェクター | 10~105 | ~600 | なし | ·可動部なく保守が容易 ·排気量が大きい | ·運転コスト(蒸気費用)が大きい |
表はあくまでも概要であり、目安として使用してください。ここに載っていない種類の真空ポンプもあります。
①運転圧力と到達圧力、②排気速度、③ガスの成分だけでなく、設置スペースや保守まで考えた選定をすることが重要です。
真空ポンプの選定ができたら、必ずメーカーに相談しましょう。
⑤メーカーに相談する
各種真空ポンプのメーカーと連絡を取る際には、取引のある商社さんに相談するのが良いと思います。
自分で調べたいという方には、IPROSのホームページがおすすめです。
真空ポンプの種類ごとに各社の製品一覧が確認できます。
まとめ
真空ポンプの種類と選び方を解説しました。
真空ポンプは様々な種類があります。
それぞれの特徴を理解し、プロセスに適した真空ポンプを選定していきましょう。
真空技術をもっと勉強したい方は、参考書で体系的に学ぶのがおすすめです。
初学者におすすめの真空技術の参考書5選!