【真空排気の設計】真空ポンプの排気速度と配管径の求め方【計算付き】

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真空ポンプの設計したいけど、必要な排気速度ってどうやって求めるの?

配管径の決め方は?

配管径の決め方は?そんな悩みを解決します。

この記事の内容

・真空排気の配管径の求め方
・真空排気速度の求め方

この記事を読めば真空排気設計の基礎知識を網羅し、配管径および排気速度を計算できるようになります。

私は大学で化学工学を学び、化学メーカーでプラント設計の仕事をしてきました。
その経験をもとに分かりやすく解説します。

真空ポンプの排気速度と配管径の求め方

真空排気速度と配管径は以下の手順で求めることができます。

  1. 真空排気量Q[m3・Pa/s]を求める。
  2. 実効排気速度qeff[m3/s]を求める。
  3. コンダクタンスK[m3/s]を推定する。
  4. 排気速度qp[m3/s]を求める。

①真空排気量Q[m3・Pa/s]の求め方

真空排気量Qは、発生ガス量Q1、流入ガス量Q2、材料からの放出ガス量Q3、真空ポンプの逆流量Q4の和で求められます。

$$Q=Q_1+Q_2+Q_3+Q_4・・①$$

真空排気量は、流量[m3/s]×圧力[Pa]で表します。

これは、排気しなければならない「ガスの全体量」を表しています。

Q1~Q4はそれぞれ圧力が異なりますので、ガスの全体量を知るためにそれぞれの圧力をかけてあげる必要があるのです。

②実効排気速度qeff[m3/s]の求め方

実効排気速度qeffは以下の式で求められます。

$$q_{eff}=\frac{Q}{p_1}・・②$$

p1は操作圧力[Pa]です。

実効排気速度は①で求めた真空排気量÷操作圧力という形です。

つまり、実行排気速度は流動抵抗を考慮していない排気速度です。

流動抵抗を考慮するため、真空排気ではコンダクタンスを用います。

操作圧力が真空に近づくほど、実行排気速度は大きくなりますよ。

③コンダクタンスK[m3/s]の求め方

コンダクタンスは流体の流れやすさを表す指標です。

流動抵抗の逆数に相当するコンダクタンスK[m3/s]を用います。

配管の両端における圧力差をp1−p2とすれば、以下の式となります。

$$K=\frac{Q}{p_1−p_2}$$

圧力損失が大きくなるほど、コンダクタンスは小さくなります。

コンダクタンスは数値が大きいほど流体が流れやすく、小さいほど流れにくい。という感覚を持ってくださいね。

設計段階で圧力差p1−p2はわからないため、以下のようにコンダクタンスを計算します。

長い円形配管のコンダクタンス(l>d)はpd>0.67のとき粘性流として

$$K=2.45×10^{−2}(\frac{pd^2}{μl})・・③$$

で求められます。これは直管のコンダクタンスですので注意してください。

排気所要時間を考慮して、K>qeffとなる排気配管の径を選定します。

l:配管長[m]

d:配管径[m]

μ:流体粘度[Pa・s]

yamato

この記事では真空排気の全体像をつかんでいただくため、簡単な直管のコンダクタンスの計算を紹介しました。
粘性流以外、短い円管、曲がり管などの様々なコンダクタンスの求め方は別記事にまとめたいと思います。

【真空排気】様々な配管のコンダクタンスの求め方

排気速度qp[m3/s]を求め方

真空ポンプの排気速度$q_p[m^3/s]は以下の式から求めます。

$$\frac{1}{q_p}=\frac{1}{q_{eff}}−\frac{1}{K}・・④$$

この排気速度が真空ポンプに必要な排気速度です。

実際には、排気速度に安全率をかけて真空ポンプの選定を行います。

計算例

298Kの空気が0.09m3/hr(0.1MPa)で連続的に流入している系内を0.05Paに保ちたい。

この時の排気配管径と長さ、真空ポンプの排気量を求める。

真空ポンプの逆流量は1×10−3m3・Pa/s

材料からの放出量は微小であり無視できるものとする。

配管径は0.25m、配管長は10mの直管とする。

  1. 真空排気量Q[m3・Pa/s]を求める。
  2. 実効排気速度qeff[m3/s]を求める。
  3. コンダクタンスK[m3/s]を推定する。
  4. 排気速度qp[m3/s]を求める。

手順1:真空排気量Q[m3・Pa/s]を求める

流入ガス量Q2

$$Q_2=0.09×0.1×10^6/3600$$

$$=0.25m^3・Pa/s$$

真空ポンプの逆流量Q4

$$Q4=1×10~{−3}m^3・Pa/s$$

したがって真空排気量Qは①式より

$$Q=Q_2+Q_4$$

$$=0.25+1×10^{−3}$$

$$=0.251m^3・Pa/s$$

手順2:実効排気速度qeff[m3/s]を求める

実効排気速度は②式より求める。

$$q_{eff}=\frac{Q}{p_1}$$

$$=\frac{0.251}{0.05}$$

$$=5.02m3/s$$

手順3:コンダクタンスK[m3/s]を推定する

長い円形配管のコンダクタンス(l>d)

$$pd=0.05×0.25$$

$$pd=0.0125>0.67$$

よって粘性流の式③を用いてコンダクタンスは

$$K=2.45×10^{−2}(\frac{pd^2}{μl})$$

$$K=2.45×10^{−2}(\frac{0.05×0.25^2}{1.822×10^{−5×10}})=17.15m^3/s$$

ここでK>qeffか確認する。

今回はK=17.2m3/s>qeff=5.02m3/sであり、問題ない。

もし、K<qeffとなった場合は流動抵抗が大きすぎるということなので、配管径を大きくする必要があります。

手順4:排気速度qp[m3/s]を求める

真空ポンプの排気速度$q_p[m^3/s]は④式より求める。

$$\frac{1}{q_p}=\frac{1}{q_{eff}}−\frac{1}{K}$$

$$\frac{1}{q_p}=\frac{1}{5.02}−\frac{1}{17.2}$$

$$q_p=7.1m^3/s$$

まとめ

真空排気速度の求め方、配管径の求め方を解説しました。

真空排気の理論と計算手順は理解いただけましたか?

この記事の内容が真空排気の基本となります。

設計手順と計算内容を理解して、安全で経済的な設計をしていきましょう。

真空技術をもっと勉強したい方は、参考書で体系的に学ぶのがおすすめです。

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