サイクロンってどうやって設計するの?
捕集限界粒子径と圧力損失の求め方は?
そんな悩みを解決します。
サイクロンとは
捕集限界粒子径の計算方法
圧力損失の計算方法
計算例
この記事を読めばサイクロンの基本的な設計計算ができるようになります。
私の仕事は化学プラントの設計です。
その経験をもとに分かりやすく解説します。
目次
サイクロンの設計計算
サイクロンとは
- 遠心力を利用した機械的分離装置
- 気体中の固体・液体粒子を分離できる
- 通常気体の入口速度が10~20m/s、捕集限界粒子径が5~10μm、圧力損失が1~2kPa
粒子を含む気体はサイクロン入口管から入り円筒胴を旋回します。
このとき粒子は遠心力で円筒胴の壁に沿って沈降していきます。
一方、気体は旋回したのちサイクロン中央で上昇し上部の出口管から出ていきます。
サイクロン掃除機と同じ原理です。
捕集限界粒子径の計算方法
粒子は大きいほど遠心力を受けます。
粒子が小さくなっていくと、遠心力が作用しなくなりサイクロン上部の出口管から気体と一緒に出て行ってしまいます。
サイクロンの遠心力で分離できる最小の粒子径を「捕集限界粒子径」と呼びます。
捕集限界粒子径の計算式を2つご紹介します。
いずれも理論計算式なので一つの目安として考えてください。
①Rosin、池森らの式
$$d_{pc}=\sqrt{\frac{18η}{π・u_i(ρ_p−ρ_f)}}×\frac{D_e}{2.26\sqrt{H}}・・①$$
②初歩から学ぶ化学装置設計より
$$d_{pc}=\sqrt{\frac{9η}{π・u_i(ρ_p−ρ_f)}・\frac{b・h}{L}}・・②$$
η:粘度[mPa・s]
ρp:粒子密度[kg/m3]
ρf:気体密度[kg/m3]
b:入口幅[m]
h:入口高さ[m]
H:円筒下端から円錐下端までの長さ[m]
De:内筒内径[m]
L:円筒胴長さ[m]
ui:入口速度[m/s]
圧力損失の計算方法
圧力損失は以下の式で計算できます。
$$Δp=\frac{u_i^2}{2g}p_f((\frac{A_i}{A_e})−1+F)g・・③$$
Fはサイクロンの圧力損失をサイクロン入口の動圧の倍数で示したものです。
入口が矩形流路のとき
$$F=\frac{16bh}{D_e^2}・・④$$
Δp:圧力損失[Pa]
ui:入口速度[m/s]
g:重力加速度[m/s2]
ρf:気体密度[kg/m3]
Ai:サイクロン入口断面積[m2]
Ae:サイクロン内筒断面積[m2]
b:入口幅[m]
h:入口高さ[m]
De:内筒直径[m]
計算例
✔計算条件
- 粘度η=18.2×10−6[Pa・s](空気、20℃)
- 粒子密度ρp=1600[kg/m3]
- 気体密度ρf=1.2[kg/m3](空気、20℃)
- 入口幅b=0.1[m]
- 入口高さh=0.22[m]
- 円筒下端から円錐下端までの長さH=1.0[m]
- 内筒内径De:0.2[m]
- 円筒長さL=0.5[m]
- 入口速度ui=15[m/s]
捕集限界粒子径を求める
捕集限界粒子径を2つの式から求めてみます。
①Rosin、池森らの式
①式に計算条件を代入する。
$$d_{pc}=\sqrt{\frac{18η}{π・u_i(ρ_p−ρ_f)}}×\frac{D_e}{2.26\sqrt{H}}・・①$$
$$d_{pc}=\sqrt{\frac{18×18.2×10^{−6}}{π×15(1600−1.2)}}×\frac{0.2}{2.26×\sqrt{1.0}}$$
$$=5.83×10^{−6}m$$
$$=5.8μm$$
②初歩から学ぶ化学装置設計より
②式に計算条件を代入する
$$d_{pc}=\sqrt{\frac{9η}{π・u_i(ρ_p−ρ_f)}・\frac{b・h}{L}}・・②$$
=\sqrt{\frac{9×18.2×10^{−6}}{π×15(1600−1.2)}・\frac{0.1×0.22}{0.5}}$$
$$=9.78×10^{−6}m$$
$$=9.8μm$$
計算の結果、捕集限界粒子径を求めることができました。
- Rosin、池森らの式:dpc=5.8μm
- 初歩から学ぶ化学装置:dpc=9.8μm
粒子径が5.8ないし9.8μmまでは捕集可能であり、それより小さくなると捕集できないことを示しています。
理論計算式なので、あくまで参考として考えてください。
圧力損失を求める
サイクロンの圧力損失を求めていきます。
まず、④式からFを求めます。
$$F=\frac{16bh}{D_e^2}・・④$$
$$F=\frac{16×0.1×0.22}{0.2^2}$$
$$F=8.8$$
③式に計算条件を代入します。
$$Δp=\frac{u_i^2}{2g}p_f((\frac{A_i}{A_e})−1+F)g・・③$$
$$Δp=\frac{15^2}{2×9.81}×1.2×((\frac{0.1×0.22}{(0.2/2)^2π})−1+8.8)×9.81$$
$$Δp=1147Pa=1.2kPa$$
計算の結果、計算条件におけるサイクロンの捕集限界粒子径と圧力損失が求められました。
- 捕集限界粒子径~dpc=5.8~9.8μmほど
- 圧力損失$Δp=1.2kPaほど
この計算結果は、理論値のため参考程度に考えてください。
まとめ
サイクロンの仕組みと設計計算方法を解説しました。
捕集限界粒子径と圧力損失の計算をマスターすれば、目的の粒子径を分離できるか計算できるようになります。
一度手計算してみると、理解が深まります。
是非チャレンジしてみてください。
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